2024/11/06

第11回 股関節痛の悪化で産後が大変になる

私の産後トラブル記

私は、骨盤の歪みから妊娠しにくかった身体を整体で治していただき、娘を授かりました。しかし、産後の身体の状態は思わしくなく、とても辛い時期を過ごしました。
こうした自分の体験から、妊娠を望んでいても難しい方や、産後の辛い症状をかかえる方たちのお役に立てたらという思いで整体の仕事をしています。産前・産後の辛さをはじめとして、医学では対応しきれない、なかなか家族にもわかってもらえない痛みを少しでもやわらげるヒントになればと思い、これから何回かに分けて、私の「産後トラブル」とその対処について、みなさんにご紹介できればと思います。

生涯のテーマとなった股関節痛

 
私の股関節痛の原因は、先天性の「臼蓋形成不全」という障害からくるものでした。本来、骨盤の中で股関節が抜けないように骨でカバーされている部分が、生まれつき欠けていて、股関節が脱臼しやすい形になっています。赤ちゃんの健診のときに股関節が開きにくいことで発見されることもありますが、あまりはっきり見られない場合は、レントゲンを撮って初めて発見されることがあります。
私の場合も30歳頃に、訪問看護で重い人を持ち上げたあとに左股関節が痛くなり、整形外科を受診したところ、念のために撮ったレントゲンで発見されました。
これまでの頭痛や腰痛は、この股関節の歪みが原因で、背骨や顎が歪んで様々な不調を起こしていたことがわかり、腑に落ちた瞬間でした。
股関節が脱臼しないよう自分の骨を切って足す「骨切り術」という手術を勧められましたが、いろいろと調べる中で、手術をしても痛みはなくならないことも多いことを知りました。
それからは重い物を持つときは、左股関節に重心をかけないように気を付けつつ、股関節が外れないように筋肉でカバーする筋トレを毎日続け、休みの日には整体を受け、教えてもらうことになりました。

 

切迫早産で筋力が落ちて悪化する

 
ところが、訪問看護の仕事はとても忙しく、妊娠中でも重い人を抱えることが多々ありました。切迫早産になってもお腹が張っても休めない状況が続いて、とうとう動けないほどお腹が痛くなりました。産休に入ったとたん、寝たきりになり、その2週間後に早産となりました。
お腹の皮とおっぱいだけがで~んと出ているにもかかわらず、手足はやせ細って妊娠前よりも体重が減っていたので、筋肉が落ちるスピードの速さに驚きました。
抱っこをしていても腰がグラグラして、腰も左股関節も痛くなり、腕の力もないので、あっという間に腱鞘炎になりました。睡眠不足が続いて産後うつのような状態になり、軽い体操でさえやれないほど、自分を立て直す気力もなくなっていました。育児を楽しむ余裕もなく、「子どもさえ何とか生きていてくれたらいい」という気持ちで授乳を仕事のようにしていたと思います。

 

股関節痛の悪化

 
半年ほど経ってから、グラグラしていた腰も固まってきて、靴下を履くのも大変なくらい体中がカチコチになって、股関節の痛みが一段とひどくなりました。杖とマジックハンドを購入し、近隣の接骨院や鍼灸院に通いましたが、なかなか良くなりませんでした。
「これはまずい、もう限界だ」と自分の体の悲鳴が聞こえるようになって、ようやく、「我が家からは遠くて行くのはたいへんだけれど、整体の師匠のところに行こう」という気持ちになりました。治療してもらってからは腱鞘炎も股関節痛も良くなりました。それに伴って塞ぎこんでいた気持ちも溶けたように軽くなり、しだいに育児が楽しめるようになりました。
まずは体から整えなくては、心も整えようがなかったのかもしれません。体が整ってきたら心を整えようという気持ちになれて、ようやく体と心が整ってきた感じがします。自分ではどうにもならないときは、まずは誰かに体を整えてもらう、というのは重要だと実感しました。

 

再び股関節痛の悪化

 
産後8か月で保育園の4月入園に合わせて仕事復帰し、少しずつ体を慣らしていきましたが、重労働は避けられませんでした。股関節が痛くなっては整体の師匠のところに駆け込むというのを繰り返していました。
仕事と育児の両立でいっぱいで、自分のケアを怠り、整体の師匠に頼るクセもついてしまっていました。産後うつを脱してからは、アドレナリン全開で走り回っている感じでした。
師匠からは、「こんなに頻繁に悪くなるような体の使い方を治して、悪くなってから駆け込むのではなくて、もっと自分で治せるように考えたらどうか。このままじゃあ、看護師の仕事は続けられなくなるよ」と毎回言われるようになりました。
「おっしゃる通りです」としか言えませんでした。教えていただいたセルフケアを続けようとしても、すぐに崩れてしまう自分にも自己嫌悪でした。
 あるとき、子どもの具合が悪くなって抱っこが増え、とうとうまた股関節がひどく痛み、歩けなくなるほどになりました。「子どもの具合が悪いのに、どうしよう」と焦りました。これまで習った方法を思い出しながらやってはダメ、これもダメ、と一晩中試して、明け方にようやく自分なりの方法がみつかりました。
 その後も何度か繰り返し、危機を脱してきましたが、子どもの熱がなかなか下がらず、病院の行き来と抱っこが増えて、どうやっても改善しないほど股関節の痛みがひどくなりました。
 とうとう長年勤めた管理職の仕事を辞める決意をし、パートで働きながら整体で開業をするための勉強を始めることにしました。師匠に治療してもらい、決意を伝えたところ、これからはプロとしてしっかり勉強しなさいと応援してもらえました。

また、娘が4歳の頃、頭痛を頻繁に訴えるようになり、検査をしても原因不明だったこともあり、整体で何とかしたいという思いを強くなっていました。
このことが転機になり、看護師を辞め、整体師として転職する決意もつきました。

 

産後の股関節のゆがみは女性の一生の問題を引き起こす

 
産後の自分を振り返ってみると、グラグラだった腰と股関節を産後の早い時期に整えておけば、ここまでひどくなることはなかったと後悔します。自分だけでなくもっと多くの女性の産後の体をなるべく早く整えられるようになりたいという思いが強くなりました。
また、産後の方の整体を専門にするようになってからは、実際には私のような臼蓋形成不全ではなくても、股関節がゆがんている方が多く、産後のユルユルの時期に治せばかなり良くなることもわかってきました。
そして産後の早い時期に治して仕事復帰してからも通ってくださる方は、更年期になっても、大きな不調なく働いていらっしゃいます。その方の「仕事で疲れた~」というお話をうかがいながらも、整体師になって良かったと思え、励まされています。

 

天職に転職

 
私自身の股関節の問題は整体師になっても続きましたが、そのたびにセルフケアがバージョンアップし、だんだん解決できるようになってきました。自分に困難な課題がやってきた、と思うと、様々な整体セミナーを受講し、勉強し続ける意欲がもらえます。
自分の障害を、不幸と思わず、愛でてあげようと思える、そんな体と、励ましをもらっている方々に感謝しています。